裏フィンランド

憧れる人も多い北欧フィンランド、表面的なことでなく内側の部分を紹介したいと思います

フィンランドの行政機関公式動画で学ぶ税金用語

フィンランドの行政機関である国税庁(Verohallinto)は公式のYoutubeチャンネルを持っています。

 行政機関だからさぞかしお堅い動画がアップロードされているのかと思えば、たまに変な動画もあります。今回はそんな行政機関の公式チャンネルとは思えない動画を紹介します。

 

なおこの動画ではちょっとした税金用語が出てきます。
より楽しめるよう、動画を見る前にまずは各用語を解説したいと思います。

 

住宅修繕控除 Kotitalousvähennys

家というのは長く住むと修理が必要になったりするものです。
特に一軒家に住んでいる人は集合住宅に比べより多くの修繕が必要になるでしょう。

 

家主自身が修理することはあるものの、プロに依頼する時もあります。
技術的に難しい場合もあれば単純に時間が惜しいから人に頼むなど、経緯は様々です。
そんな修理業者に頼む場合、フィンランドではよく脱税行為が行われていたのをご存じでしょうか?

 

例えばパイプの修理をプロの業者に頼んだとしましょう。
会社から派遣されてきたりしますが、中には個人事業主の人が来る場合もあります。
※むしろこの手の業者は個人で会社を運営して、実労働者は自分だけというのが割と多い印象です。

 

そして作業後は報酬を現金手渡しで要求する人もいます。
現金払いをされると税務署は当然その修理作業に「いくら報酬が発生したか」を把握することができず徴税が難しくなります。(もちろん脱税は違法行為です。)

そこで修繕作業に発生した費用を控除対象にし、費用負担者に申告してもらうような仕組みを作りました。

控除され毎年の納税額が減るということで、修理作業を依頼した人(家主)は税務署に申告するようになります。そこから修理業者の収入を逆算する作戦です。

この修繕費の控除がKotitalousvähennysです。

しかしこの作戦が意味をなさない時もあります。ただとても長くなるので今回説明は割愛します。

 

国税庁の別名 Verokarhu

皆さんはフィンランド語の「Karhu」という単語をご存じでしょうか?


画像の通り、熊を意味します。

ではそれと似た単語「Karhuta」はどういう意味か想像できますか?ちなみに動詞です。

実は熊とは関係なく「(債権者が)催促や督促をする」を意味します。
Karhu(熊)とKarhuta(催促・督促)、更にVero(税)と単語をかけ合わせた言葉がVerokarhuです。

Verokarhu(税金熊)は税金を徴収する、つまりVerohallinto(国税庁)のことを指しています。

フィンランドでの租税徴収キャラクターは熊です

 

スウェーデン語も忘れずに Skatt

Skattはスウェーデン語で税金(英語でtax、フィンランド語でvero)と言う意味です。

 

収入のボーダーライン Tuloraja

以前の記事でもお伝えしように、フィンランドでは収入によって納税率が大きく変わります。
(収入が多い人は税率が上がり、逆に低い人は下がります。)
そのため年間の収入を事前に計算しておいて、自分にとってちょうどいい納税率(Veroprosentti)を決めておくことが推奨されます。

税率を適切に設定しておくと必要以上の給与天引き(Ennakonpidätys)がされません。いずれ返還されるとはいえ毎回多すぎる税金で手取りが減るのは避けたいですよね。

 

しかし臨時収入などで想定していた年間収入を超えてしまった場合はどうなるでしょうか。
当然追加の税金を支払うことになり、収入を超えた時点で追加納税率(Lisäprosentti)が適用されます。
その追加納税が発生するかしないか、そこのボーダーラインがTulorajaです。

画像の例では毎月18%(と失業保障+年金など諸々)が差し引かれます。しかし2月から12月の合計収入がTulorajaである€37720を超えた場合、超えた額の税率は18%から37,5%に変更になります。

※この税率簡潔に表記されてますが実際はこんなに単純ではないのでご留意を。

ちなみのこの追加納税率の適用は自動的に行われます。そのためその年の収入が想定よりも多かったからといって、追加納税通知書の額に驚くことはあまり起こりません。
(もちろん莫大な額の臨時収入があったりした場合は別ですが)

逆を言うと想定より多かった場合、大抵年末の給与からの天引きが大幅に増えます。
そのため12月の給与はいつもより少ないということは非常によくあることなので覚えておきましょう。
年末年始は何かと入用なので気を付けましょうね。

 

追加納税 Jäännösvero

その名の通り申告した納税額が足りない場合に支払うことになる税金です。
逆に払い過ぎにより戻ってくる還付金はVeronpalautusと言います。

 

動画を見てみよう

それでは国税庁の変な動画を見てみましょう。

閲覧上の注意

本動画には激しい点滅の演出があるため、暗い場所や大画面で見るときは気をつけて下さい。
画面から十分に目を離して閲覧しましょう。また音量も要注意です。

 

国税庁が真面目に「こういう動画を作ろう」と企画したの信じられますか?

動画のコンセプトは「税金を払ってサックスを吹こう」という、よくわからないものです。
このわざとらしい低クオリティ動画(たぶんわざと)や踊っているおじさんも謎です。

自分がこの動画を見た時の最初の感想は「一体何を見せられているんだ?」でした。

 

おまけ

ちなみに2024年ユーロビジョンに出場予定のフィンランド代表アーティスト「Windows95man」が楽曲提供しています。彼はその名の通り90年代らしさをベースに曲を作っています。

ALLDAYアーティストページより

ユーロビジョンとは

正式名称はユーロビジョン・ソング・コンテスト。
ヨーロッパの歌の祭典です。各国からの代表者が歌い、審査員とそれぞれの国の視聴者による投票で優勝者を決定します。長い歴史があり規模も大きいこの大会でスター歌手が生まれることも珍しくありません。

このアーティストの強烈なビジュアルに興味がでた人はこちらを見てください。noteで熱く語っています。

 

 

みんなも納税しようね!

 

 

画像引用元:
Wikipedia(Karhu)
Iltasanomat